読み終わりました。この本実は結構前に出たものかと思っていたんだけど、2005年の2月に発売だった。すげー最近じゃん、この前じゃん。オレが買ったのは第三版だった。なんかTVで紹介されたりもして結構売れてる本だったのか。
前にも書いたけど、情報に思想があんまり引っ付いてこない本だったので体験記の部分は読みやすかった。所々、著者の知識による歴史解説がなされている部分があるんだけど、この部分の情報の真偽はオレには判断しかねるが、特に疑わずに受け取っておこうと思う。
著者が回った地域としては、サハリン、台湾、韓国、北朝鮮、中国東北部、ミクロネシアということになる。親日的な地域や反日的な地域があるが、それぞれにはそれなりの理由がある。その事の一端がわかるだけでも読む価値はある。
中国、韓国、北朝鮮に関しては、国が反日的な内容の教育をしているので、仕方ない面もあるんだろうけど、国民は、国の教育に対して全くの疑問というものを持たないんだろうか?という所を不思議に思った。でも、よく考えると昔のオレもそうだったなあ、と思うと普通の事なのかも。また反面、韓国内の戦争体験者の中にも、戦争当時のことに、肯定的な感情を抱いている人もいるんだけど、それを公衆の面前では口に出して言えないようで、こういう部分が一番の問題のように思う。情報発信の自由がないんだもんなあ。
著者は、中国では関わった人達に「日本の侵略」ついて何度も気軽に聞かれる。その時には決まって「中国のチベット侵略」について聞き返したそうだ。(これはオレも聞いてみたいことだったのですごく興味があった)だが、それに関しては誰もが、日本の侵略は否定、チベットの侵略は肯定する。これは一貫しているという事だった。これは韓国での竹島の件についても同じような感じだったらしいけど、国定教科書による歴史教育の成果だろう。特にチベットの件に関しては、矛盾を感じないように、実際にチベットで起こった事なんか全く知らされていないのだろうと思う。
戦争体験者はもう十数年したら居なくなる。そうした後に残るのは、教えられた事をそのまま真に受けている世代。そしてそこに残った事が事実とされていくんだろうと思う。そうなっていくんだなあと思うと、なんだか言いようもない気持ちになった。自国ことをいかに第三者的に受け止めるか?という事と、その時思ったことを率直に言う事が許されるかどうか?という2点が圧倒的に欠けているのが、ものすごく怖い。
読んでいて、すごく感じた事は反日的な国では、戦争を否定するような教育がされていないのではないか?という事だった。戦争を悪とするのではなく、単純に日本を悪としている。これで戦争がなくなるワケはないなあという。
台湾では、老人が「日本もう戦争をしなくて良いよ」という言葉を口にしていて、まさにこれが体験者の実感だろう。実際に戦争を体験した世代はこういう事を伝えてた方が良いじゃないかな。なぜ反戦ではなく反日になるのか?という部分にこそ戦争が起こる理由があるんじゃないかと思う。
著者は最後に靖国神社に参拝に行った。これは単純に戦没者を悼む気持ちからなのだろうと思う。今の日本はやはり戦没者の上に残っているわけだから。筆者が最後に持った感想は、以前にオレが思った事とあまり違いはなかった。結局明確な答えはないワケで、サハリンで老人が言った「時代の流れ」という言葉かなあ。歴史に対して「もし」を言い始めたらキリはないし。
気になった点としては、南京へ行かなかったのはなぜだろう?という点と、他の戦争関連の書籍でも見かける「軍部の暴走」という言葉によって片づけられる部分。日本が泥沼の戦争に突き進むにきっかけとしての「軍部の暴走」というのが非常に曖昧な気がして他の本でも気になる。この辺は本当にタイムマシーンでもないとわからないんだろうけど、詳しい本があったら読んでみたい。
この本は本当にお薦めです。最初に書いているように、ある思想のために書かれている本ではないと思うし、読んだ感じではそういう風に思わなかったので。もし、誰か読んでなんかおかしいぞって部分があったら教えてくれると嬉しい。個人的には、中学くらいの社会科の授業で読んで欲しいくらいの本だと思いました。著者の西牟田靖氏に感謝。